『美須麻流（みすまる）』は勾玉を紐で連ねた宝飾。天照大神（アマテラスオオミカミ）が武器とともに、霊力を身につけるために髪や手に付けたと古事記に記されています。その形状から星団『すばる』の語源となりました。『御統』や『統星』という漢字が当てられ、平安時代には清少納言が枕草子で「星は すばる」と讃えています。星座や星名はギリシア・ローマ神話由来のものが多いので外来語と思いがちですが、『すばる』は正真正銘の和名だとか。なお、中国名は『昴宿（ぼうしゅく）』だったので、その後、漢字『昴』が当てられるようになったそうです。

そのギリシャ神話からの名は『プレアデス星団』。プレアデスは女神アルテミスに仕える７人の姉妹でした。乱暴者の猟師オリオンに追いかけ回された７人を、女神アルテミスが鳩に変えて空に逃がしてやり、そしてさらに星になったとされています。

冬のこの時期の空、午後９時頃に南東の空を見上げると、一番にオリオン座が見つかります。その三ツ星を右上にたどっていくと線上やや左に明るい星が目につきます。これがアルデバラン。上の画像では中心より少し上あたり。さらにその上、画像の最上部中央あたりに青く集まった星々、それが昴です。都会では光が多くて見つけにくいですが、よく目を凝らすと確認できます。昴を知らない人はいないでしょうが、昴を見つけることのできる人は少ないのではないでしょうか。

今秋、『昴』を歌った谷村新司さんが急逝されました。『いい日旅立ち』『三都物語』『陽はまた昇る』…、アリス時代から好きな曲が沢山あった私にとって、今年一番残念なニュースとなりました。音楽界のみならず、鉄道や旅行や野球…と多くの業界に多大な貢献をされました。そして代表曲『昴』は、どれだけ多くの人に勇気を与えたことでしょうか。いま谷村さんは、昴から地球を見ているのかもしれません。

さて、今年もいよいよ残り少なくなりました。疫病と天候異常に加えて戦争に心を痛めた一年でした。ところで、青い光を放つ昴はまだ５千年から１億年という若い星々だそうです。それに対して地球の年齢は４６億年だとか。さらに、１０億年後には、地球は水分も酸素もない星になってしまうという研究結果が発表されています。宇宙のお話は壮大です。しかしそれは、地球上で争っていることの愚かさを教えてくれます。領土や宗教や諸問題が存在することは事実ですが、人類すべてがもっと視点を変え視野を広げて、互いに理解し協力し合って平和を大切にすることはできないのでしょうか？　昴から谷村さんは今、どう見ていることでしょう。せめて大阪市出身で野球好きだった谷村さんに、平和の中で、阪神タイガース日本一達成の光が届いていますように祈ります。

みなさま、この一年も誠にありがとうございました。
どうぞ、良いお年をお迎えください。